家電業界として日本初のトータルエコキャンペーンを始めたのが2003年。
その後、20年あまりで日本のエコ、環境配慮に対する取り組みはどのように変化してきたのか、私の職務経験から振り返ります。
「省エネ」「節水」の歴史を大きく変えた象徴的な製品といわれるのが、世界で初めて発売された「ななめドラム洗濯乾燥機(NA-V80)」でした。ドラムを30度傾けたことにより、従来の縦型洗濯機(同社7年前比)と比べて約60%の節水を実現、さらにお年寄りや車椅子の方でも奥まで手が届きやすく中が見やすいというユニバーサルデザイン(UD)を伝えたTVCMは、「使いやすい~♪」というCMソングとともに覚ええている方もいらっしゃるかもしれません。


当時はぞくぞくと省エネ、節水の環境配慮型新製品が発売されました。
省エネNO.1 10年前と比べて年間約23,200円お得のノンフロン冷蔵庫、
手洗いより節水 年間34,700円もお得な食器洗い乾燥機、
そして電球型蛍光灯のパルックボール、家庭用生ごみ処理機など、 商品群の広告で家まるごとで年間98,800円節約と訴求していました


当時、朝日新聞 天声人語が卓越した表現で伝えています。(以下、一部抜粋)
「チョコ、マロン、モモとくれば、ケーキかアイスと思う方が多いだろう。実はこれ、犬の名前の上位三つだ。…
犬ならポチ、猫ならタマと、昔は仲間を代表する名があった。今時のペットは家族の一員ということか、名前は甘くかわいく、動物臭がすっかり抜けた。チョコは3年続けて首位だという。名は世に連れである
松下電器産業が今年の秋、海外で定着したブランド「パナソニック」に社名を変える。あの「ナショナル」も消える。創業90年の節目に、「あまねく響く」を意味する一つの名で飛躍を期すそうだ …
「明るいナショナル」は高度成長期の合言葉だった。白黒テレビに流れるCMの混声合唱は、右肩上がりの国土にあまねくこだました。中高年には「家電のポチ」とさえいえるその呼称が、名実ともに歴史になる 通常、名前を改めても中身は変わらない。ポチがワンとほえ、チョコがニャンと鳴くわけではない。ポチと同じく、松下やナショナルにも長く親しまれたゆえの通りのよさがある。あえて捨てるからには、鳴き方までも変える覚悟がいる。そんな再出発になろうか。ちなみにポチの名は今、223位である。」
2009年になると日本国内パナソニックブランド統一キャンペーンがスタートします。

「Panasonic ideas for life」(当時のグローバルブランドスローガン)のロゴの下に、それまで「National」ブランドで展開されていた冷蔵庫、洗濯機、掃除機、エアコン、電子レンジなどの白物家電(生活家電)が一堂に展示され、単なるブランドロゴの掛け替えではなく、住宅設備や照明に強かった松下電工(のちのパナソニック電工)や、電池技術に強みのあった三洋電機をグループに完全に取り込み、松下電工・三洋電機の完全子会社化でシナジー効果を最大化する戦略が示されました。 さらに展示されている家電の多くに「省エネ」「環境配慮」を前面に出した技術(のちの「ECONAVI(エコナビ)」などへ続く流れ)が盛り込まれ、環境先進企業としての姿勢「エコアイデア」を提唱しました。

これはパナソニックグループの社員が社章と一緒に着用していたピンバッジです。環境保護を謳う企業理念を現したものでした。
翌年の2009年から暮らしに合わせて最適なエコを考える「エコナビ」キャンペーンをスタート。白物家電、AVC、照明、電動自転車、住宅設備まで国内外商品へ順次、発展し市場導入を行います。
さらに「エコナビ商品1台で1本の植樹を!」キャンペーンも並行してスタートし、国際NGOと連携、世界中のエコスクールと植樹活動を推進、2012年までに世界70カ国で累計500万本植樹を実施するまでに至りました。
しかし2011年、あのおぞましい東日本大震災が転機となります。
全国的に深刻な電力不足となり、夏場を中心に大規模な節電が求められましたが、震災発生当時、販売促進を前面に出すキャンペーンは慎むべき。震災地向けに点検・修理の相談センターを告知、「~節電を上手に進めるために。今できることを、皆様とご一緒に考えていきます。」と広告のトーンは一変しました。


私は仙台市出身だったこともあり、まずは実家に電話するも一度だけつながった後は数週間つながらないまま、被災地支援に応募して福島県で家財の運搬、家電の修理などを行っていました。福島原発が放射能漏れを起こしていることを知らずに雨に打たれながら荷物を運んでいたことを今でも覚えています。
支援活動が少し落ち着いてから、エコナビキャンペーンを再開すべきかどうか?植樹は?自分でもどうすべきか道を見いだせないまま、職場の仲間たちと悶々とする日々でした。
被災地以外の地域では、節電を積極的に訴求することはやはり必要と結論づけ、「節電をエコナビと。」というキャッチフレーズでキャンペーンを再開しました。

ではグローバルに広げていた植樹活動はどうするのか?
被災地では植樹どころではないはず、という意見が大半、
その時、私は2003年日本全国の幼稚園に112万粒の花の種をプレゼントした
「赤ちゃんの数だけ緑をふやそう」キャンペーンを思い出していました。
その時の記録動画です。
津波に襲われた青森、岩手、宮城、福島、茨城の沿岸部の幼稚園が今、どうなっているのか、どうしようもなく知りたくなり、各県の幼稚園を訪問しました。
そしてとても悲惨な状況を目の当たりにします…
何かできないか、でも何もできない自分、何か希望が見つけられないものか、
ふと思いついたのが、入園、入学の時に必ず記念写真と一緒に写っていた桜でした。
桜の苗木を送ってはどうか、でもそれどころではないかもしれない、
そこで被災地の幼稚園に手紙を送って、その企画が受け入れてもらえるかどうかを
聞いてみることにしました。
そして「喜んで」という返信があった幼稚園に、桜の苗木を送ることにしました。

グリーンサンタ(R)という環境先進国デンマークのサンタクロースにも協力してもいました。子どもたちに緑あふれる未来を贈るため、森の色である「グリーン」の衣装をまとい、自然の大切さを伝えている環境親善大使です。
各県のTVや新聞はこの取り組みに興味を持ち、ローカルニュースとして取り上げてくれました。
環境配慮商品群が拡充し、グローバルで植樹が広がり、震災も乗り越えて、ナショナル・パナソニックの取組みは、この頃にピークを迎えました。
ピークというのは最高潮、頂点を意味します。ですからその後は下降していくということになります。最大のネックは社内からの「もう飽きたね」という声でした。
世の注目を集め、評価されたことには良くある、世の常 人の常。本来、エコはサステナブルな取組み、持続可能な社会を構築するためのもので、「飽きる」という言葉にはなじまないはずです。
なのに、世界初のエコ家電から、日本のエコを牽引したNのエコ計画、グローバルに広がったエコアイデアキャンペーンは、持続可能なものとはならなかったのです。
もともとは自然保護(エコ)から始まり、将来世代を見据えた社会のあり方(サステナビリティ)へと広がり、現在の具体的な行動目標(SDGs)へと体系化されて今日に至ります。
それでは日本はどんな現状か、次に見てゆきましょう。
「国際標準から見る日本の現状、EcoVadisで分かること」に続きます。
国際標準から見る日本の現状、EcoVadis(エコバディス)で分かること私は今、ブレインファームという会社で、サステナビリティ経営推進支援のために、EcoVadis受審支援、GHG排出量の算定支援、国連グローバルコンパクト・TCFDへの対応支援 (シナリオ分析/リスク・機会分析)などを行っています。企業のサステ…


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