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「一度見たら忘れられないモノってありますか」記憶に残るコンテンツ

私が宣伝の仕事に関わり始めた30年ほど前から、そして今でも「TVCMは4回視聴しなければ記憶に残らない」ということが言われ続けてきました。そのためにはTVCMスポット予算とターゲットに届けるための宣伝費はこのぐらい必要というのが、AE(アカウントエグゼクティブ)の決まり文句のようでした。ある面では正しいですが、自分の経験に照らし合わせてみると記憶に残るかどうかは、クリエイティブコンテンツの質にかなり左右されると思っています。

コミュニケーションの効果は、質(コンテンツ)×量(視聴回数)で決まります。量を稼ぐには投下金額を上げるしかありませんが、質を上げるのはアイディア次第でどうにでもなります。

ただしここで問題なのが、どんなコンテンツなら忘れられないものになるか、です。見ている人の性格、育ってきた歴史、趣味、そして今の気分と環境などなど、すべての要素が絡み合ってコンテンツは評価されます。そう考えるとつかみどころがない感じに聞こえるかもしれませんね。でも本来のクリエーターは常にそれを乗り越えるための」アイディア出しに労を惜しまないものです。マス広告からone to oneコミュニケーションへと潮流は確かに変わりましたが、映像コンテンツには、いくつかのセオリーは存在します。

◎見たことや聴いたことがない新しさがあるか?

CGやアニメーションでの最新のテクノロジーを駆使するコンテンツ、新鮮な響きがあるのAppleのCM音楽、最近ではあまりオンエアされなくなったアイディア勝負のCMなど、自分がちょっと気になるコンテンツをちょっとだけ振り返ってみると何かしら新しさのポイントがあったのに気づくことがあります。

◎引っかかる(気になる)ものを創る

見て聴いてとにかく気持ちいいか、逆にちょっと気持ち悪いけど気になるコンテンツがあります。美しいビジュアルや気持ちのいい音楽はそれなりに巷に溢れています。でもその中でも圧倒的な美しい風景とか、思わず好きになる表情を撮るために、撮影ではディレクターや写真家がとにかく粘り、執拗に追いかけ、執念を燃やします。私自身はCM監督でも写真家でもありませんが、その場面に幾度となく立会い、驚きや感動を味わってきました。

◎バーチャル時代のリアリティという存在感

TVではドキュメンタリーやニュースを除き、全てフィクションです。また顔の見えないSNSの世界も現実とフィクションのボーダーラインを不透明にしています。まして画像合成の技術も進み、歴史的場面さえも作り直すことさえ可能です。そんな時代だからこそリアリティはとても大切。それを伝えるためのプロセスも重要です。例えば写真家の藤井 保さんが撮る旭化成のCMは長年シリーズで続いていますが、まるでそこへ旅したかのようなリアリティが数秒で伝わってくる美しさを超えた存在感があります。

◎共感、それを一歩進めて、笑いや涙を誘えるか?

限られた秒数でこれを創るのは難しいものですが、15秒CMの一言のコピーや登場人物の表情に思わず笑ってしまうことがあります。180秒なら感動巨編を創り、TVは難しくともWEBで活用することが可能です。見ている人の心を動かすために大切なのは、まず情報を一方的に伝えようとしない、ビジュアルと音とコピーの映像コンテンツ3要素を時間軸で気持ちよく構成する、最後にこれが一番難しいですが「ひとのココロ」が分かる人になるように常に努力することだと思います。手っ取り早いのは、TVならタレントの好感度、SNSならフォロワー数に頼ってコミュニケーション効果を計算するのが安心だと思いますが、タレントやYouTuberだけが記憶に残るという結果になるかもしれません。

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